育児休業とは?

育児休業とは1歳に満たない子供を養育する労働者が、法律に基づいて養育のための休業を取得できるという制度です。
労働者を雇用する企業は、以歳未満の子供を養育する労働者から申し出があった場合、育児休業を取得させなければならない義務があります。

上司に育児休業を希望したのに、育児休業を取らせてくれない・・・
なんて事があった場合はすぐに労働基準監督署など関係機関へ相談を!
育児休暇との違いは?
育児休業と間違われやすい制度に育児休暇が存在します。
育児休暇とは企業が独自に定める休暇であり、育児休業には子供が1歳になるまでと期限が定められていますが、育児休暇では企業によって子供が2~3歳になるまで取得できるようなケースもあります。
ただし育児休暇に関しては無給とする企業が多いようですので、休暇中の収入に関してはよく確認しておく必要があります。
逆に育児休業は法律で定められている制度であるため、条件を満たしていれば育児休業給付金が受給可能である点が大きな特徴です。
育休という言葉が世の中に浸透していますが、一般的には育休=育児休業を指していると考えていいでしょう。
産休(産前・産後)との違いは?
産休(産前・産後)とは出産準備期間と出産後の身体回復を目的とした休業を取得できる制度です。
そのため、産休は女性のみ取得可能な点が大きな違いと言えるでしょう。
産休期間は予定日の6週間前~出産後8週間までと期間が定められており、労働者が休業を申請した場合には企業は労働をさせてはならないとされていますが、産後については本人申請の有無に限らず休業させることが法律で義務付けられています。

労働者が希望する場合は予定日ギリギリまで勤務することは可能ですが、出産後は本人が働きたいといっても所定の期間は勤務させることが出来ないということです。
ただし、産後6週間を経過し、医師の許可がある場合に限り、8週間を待たず復職することが可能です。
育児休業の対象となる労働者とは?

育児休業の対象者は1歳未満の子供を養育している労働者となり、男女問わず取得可能です。
ただし、以下の場合は育児休業の取得ができないケースもあるので要注意です。
・子供が1歳6か月に達する時に雇用契約が終了する労働者
・雇用されて1年未満の労働者
・週の所定労働日が2日以下の労働者、日雇いで勤務する労働者

育児休業を取得できるのは育児休業終了後に職場復帰をする事が大前提なので、取得時点で退職を考えている労働者は利用できません。
※最初は復帰する予定だったが、育児休業期間中に退職する事となった場合は、育児休業の取得が問題となる事はありません。
育児休業を取得できる回数
原則として子供が1歳になるまでに2回取得が可能です。(R4年10月1日以降)
ただし以下の事情が生じた場合には再度の育児休暇が取得となりますので覚えておきましょう。
・休業に係る子または家族が死亡した場合
・配偶者がなんらかの理由(死亡/疾病など)で養育困難となった場合
・離婚などにより配偶者が同居しないこととなった場合
・子が負傷、疾病、傷害により2週間以上に渡り介護を必要とする場合
・保育所等に入所希望をしているが入所出来ない場合

基本的にはやむを得ない場合のみ3回目の育児休業が取得可能であるとの認識で問題ありません。
取得できる期間
育児休業を取得可能な期間は【子が1歳の誕生日を迎える前日まで】です。
しかし保育園に入園できないなどやむを得ない場合は1歳6か月まで延長することができ、1歳6か月時点でも入園できない場合には最長2年までの延長が可能となります。
以下が産前産後休暇~育児休業を終了するまでの期間をまとめたものです。


男性の場合は産前産後休暇がないので育児休業のみが対象期間となります。
出生後すぐに育児休業を取得することで、出生日~子供が1歳になる前日まで取得することが可能です。
以下の例を参考にして、実際に取得できる期間を確認しておくとよいでしょう。
例えば、出産日が10/1であれば
産前休業:8/21~10/1 (6週間)
産後休業:10/2~11/26 (8週間)
育児休業:11/27~翌年9/30 (1歳の誕生日前日)
男性の育児休業取得期間は?
男性の育児休業は出産日当日から取得が可能です。

そのため上記の様に出産日から子供が1歳になる前日まで継続しての取得が可能となります。
もちろん1歳以降も延長事由に該当すれば最長で子供が2歳になる前日までの取得が可能となります。
おまけ・・・パパ休暇とは?
パパ休暇とは出生後8週間以内に育児休業を取得し、かつ出生後8週間以内に育児休業を終了した場合に限り、育児休業を再取得可能とした制度の事です。
こちらの制度は令和4年10月1日をもって廃止となっており、現在ではどのタイミングで育児休業を取得したとしても2回に分割して育児休業を取得可能となっております。

企業の担当者によってはこの制度が廃止となったことを知らない恐れもありますので、分割して育児休業を希望される方は自分から担当者に確認することをおすすめいたします。
おまけ② パパ産後休業
こちらは令和4年10月1日に新設された制度で、出生時育児休業(産後パパ育休)と呼ばれています。
労働者から休業を開始する2週間前までに申し出ることで、育児休業とは別に取得可能な制度となります。


現在は育児休業自体が分割して取得可能ですので、利用を希望する方は少ないかと思われます。
取得中の就労が可能ですので、在宅ワークなどを行いつつ育児も行いたい層にはメリットがあるかもしれませんね。
休業中の収入について
育児休業を取得する上で忘れてはならないのが休業期間中の収入についてです。
育児休業利用中は要件を満たせば育児休業給付金が取得可能となりますので、内容を理解し、実際に入ってくる収入を把握しておきましょう。
なお最初に説明した通り、育児休業≠育児休暇です。
育児休暇中は殆どの企業で無給となるので要注意です!
育児休業給付金の受給要件
育児休業給付金の対象となるのは雇用保険の被保険者のみで、以下の受給要件を満たす必要があります。
なお、パート労働者でも育児休業を取得することは可能ですが、雇用保険に加入していない場合は育児休業給付金を受給することは不可能ですので要注意です!
受給要件
・休業開始前の2年間に賃金支払い基礎日数が11日以上ある月が12か月以上ある
・育児休業終了後に復職の予定がある ※あくまで取得時に退職の意思がなければOK
・休業開始前1か月あたりの賃金の8割以上が支払われていない
・就業日数が支給単位ごとに10日以下である

ややこしく書いてありますが要は
・直近2年以内で月11日以上勤務している月が12か月以上あるか
・育児休業取得後に退職の予定はないか
・育児休業を取得する月の給与が月収の8割以下か
・育児休業給付金を希望する月の出勤日が10日以下か
という感じです。
出勤日が10日を超える場合でも、就業時間が80時間以下であれば要件を満たすことになるので確認必須です!
育児休業給付金の受給期間
育児休業給付金の受給期間は原則子供が1歳になるまでの期間です。
ただし、以下の条件を満たしている場合、子供が1歳6か月または2歳まで延長が可能です。
・保育所等の申し込みを行っているが入所できない
・子の養育者が死亡やけが、病気などで養育困難な場合
・離婚などで子の養育者と別居する場合
・新たな妊娠により6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産予定、または産後8週間を経過しない場合

基本的には育児休業の延長が認められるケースであれば、給付金の期間も延長可能だと考えてよいでしょう。
育児休業給付金の金額
一番重要な金額の部分です。
育児休業給付金の算出方法は以下の通りです。
・休業開始6か月以内:休業開始時賃金日額×支給日数(30日)×67%
・休業開始6か月以降:休業開始時賃金日額×支給日数(30日)×50%

休業開始時賃金日額は以下の計算で算出可能です。
育児休業開始時賃金日額:育児休業開始前6か月の賃金÷180日

育児休業給付金の金額を算出する方法は以下に簡単にまとめましたので、これだけは確りと覚えておくようにしましょう!

具体的な支給例
育児休業給付金の算出方法は先に述べた通りです。
ここでは例をあげて、実際に受給できる金額を計算しておりますので参考にしてみてください。
例) 月収:300,000円 育児休業期間 10/1~21(21日間)
① 直近6か月の賃金総額を計算 ⇒ 300,000円×6か月=1,800,000円
② 休業開始時賃金日額を計算 ⇒ 1,800,000円÷180日=10,000円
③ 育児休業給付金の計算式で受給額を計算 ⇒ 10,000円×20日×67%=134,000円
育児休業給付金=134,000円

上記に様に、月収300,000円ですと育児休業給付金は134,000円となります。
一見すると手取り額からかなり大きく減少したように感じますが、育児休業給付金を受給する場合は社会保険料が免除されるため、実際にはそれほど大きな減収とは感じないかと思われますのでご安心ください。
※所得ではないので所得税も不要です!
まとめ
以上が育児休業を取得する上で覚えておくべき項目です。
最後に簡単にまとめますので、実際に利用を検討する際にご利用ください。
・育児休業は1歳未満の子を養育する労働者が取得可能な休業(一部要件を満たす必要あり)
・育児休業は子供1人につき2回まで分割可能
・育児休業は子供が1歳になる前日まで取得可能(要件を満たせば1歳6か月~2歳になる前日まで延長可能)
・育児休業取得中は育児休業給付金を取得可能(要件を満たす雇用保険被保険者のみ)
・育児休業給付金は【育児休業~6か月:67%】【6か月以降:50%】
・育児休業給付金は【所得税なし】+【社会保険料免除】
育児休業を取得し積極的に育児に参加することで、配偶者の大きな支えになるとともに、乳幼児期の子供と触れ合える貴重な時間を確保できます。
育児休業が単なる【お休み】ではないことを肝に銘じて、意義のある休業となるように期待しております!