この記事は債務者の最後の切り札【自己破産】について仕組みをわかりやすく解説した記事となります。
本当に万が一の時には積極的に検討すべき制度ですが、利用できるケースや利用できないケースがありますので、事前に確りと内容を確認しておきましょう!
自己破産とは
自己破産とは、財産や収入が不足することで借金を返済できる見込みがないと裁判所に認定してもらうことで債務の返済を免除する制度です。
似た制度に【任意整理】というものがありますが、こちらは返済額を減額するための手続きですので、似て非なる制度です。
法律的に借金返済の義務がなくなりますので、事実上抱えている借金がゼロになります。
自己破産を利用できる人はどんな人?
勘違いされている方も多いようですが、借金を抱えているすべての人が自己破産できるわけではありません。
いくら多額の借金を抱えていても自己破産が出来ないケースもありますので、要注意です。
誰でも簡単に自己破産できて借金がチャラになってしまうと、貸している方(銀行など)が潰れてしまうので当然ですね。
自己破産が可能なケース
自己破産が出来るケースは以下の通りです。
1.債務の支払いが不可能
2.債務が非免責債権でない
3.免責不許可事由に該当しない
1の債務支払いが不可能というのは解りやすいですが、他2つが解りづらいですね。
細かく解説しますので、最後までご確認ください!
1.債務の支払いが不可能とは?
自己破産の大前提として、裁判所が債務の支払いが不可能であると認定する事が必要です。
債務の支払いが不可能というのは単に借金の総額が多いからという理由だけではありません。
以下が代表的な判断理由となりますので、当てはまる項目が無いか確認してみましょう。
・資産の総額と内容
・収入状況
・家族構成
・生活状況
・借金理由
借金が1億あっても、豪邸に住んでいたり、豪遊しているようなケースも0ではありませんからね。
様々な状況を総合的に判断し、返済能力がないと判断された場合のみ自己破産の手続きに進むことが出来ます。
2.債務が非免責債権でないとは?
自己破産の申請を行い、裁判所から認定された場合には、原則として借金などの債務の支払い義務が免除されますので、借金を返済する必要がなくなります。
しかし、一部の債権は免責にならず、支払い義務が免除されないものがあり、このような債権のことを「非免責債権」といいます。
主に以下のようなものが挙げられます
・税金
・公共料金
・社会保険料
・損害賠償金
・慰謝料
上記以外にも生活費や養育費なども非免責債権となりますので、どれほど多額の債務を抱えていたとしても支払いが継続となります。
何でもかんでも0になるわけでは無いという事を覚えておきましょう!
3.免責不許可事由に該当しない
こちらは自己破産が認められない原因による債務かどうかを判断する項目です。
これに該当する場合は【返済すべきもの】であるため自己破産となっても債務は残る事となります。
以下に主な事由を挙げますので該当しないか確認してみましょう。
・浪費やギャンブルによる借金
・財産に関する書類の偽造/隠ぺい
・嘘をつき行った借金
・裁判所の調査を拒む/虚偽の説明を行う
・過去7年以内に破産歴がある場合
これ以外にも該当する事由もありますが、免責不許可事由に該当する場合であっても、自己破産手続きの際に裁判所から認定されるケースもあります。
自己破産が不可能なケース/
自己破産が出来ないケースは以下の通りです。参考までに抑えておきましょう。
1.返済能力がある(資産がある、援助者がいるなど)
2.予納金が払えない(裁判所に自己破産申し立てをするための手数料等)
3.職業制限に対応できない(自己破産後は一定期間就けない職業がある)
2の予納金に関しては分割払いにしてもらう等の対処法があります。
3ですが制限対象となる職業である場合、自己破産を希望するのであれば退職などが必須となります。
制限職業
・警備員 ・弁護士 ・司法書士 ・宅地建物取引士 ・保険外交員
自己破産の手続き方法
自己破産は裁判所の認定(免責許可)を受ける必要があります。
ケース毎に異なりますが、申請までの期間はおおむね1年程度となり、主な手続きは以下の通りです。
・弁護士依頼 : 債務整理に強い弁護士を選択しましょう
・受任通知を貸金業者へ送付 : 督促や取り立てが中止されます
・自己破産申請の必要書類を準備 : 弁護士の指示のもと書類を準備しましょう
・裁判所での面接 : 本人、裁判官、弁護士の3者面接が行われます ※本人が出席しないケースもあり
・一定額以上の資産売却 : 家や車などの資産があればここで売却となります
・認定 : 裁判所で面接し手続き完了
自己破産のメリット
自己破産のメリットは以下の通りです。
1.全ての債務がなくなる
2.原則親族への悪影響がない
3.財産によっては手元に残すことが可能
自己破産=債務0が最大のメリットです。
項目別の解説も確認していきましょう。
1.全ての債務がなくなる
債務の全額免除が自己破産最大の特徴でありメリットです。
似たような制度で任意整理がありますがこちらは手続きを行ってもいくらかは借金が残ってしまいます。
全額免除は自己破産のみの最大のメリットと言えるでしょう。
2.原則親族への悪影響がない
自分の債務が免除されたからと言って、その債務を親族が肩代わりする事となれば、問題が解決したとは言えませんね。
自己破産は個人単位で実施する手続きとなりますので、自己破産によって親族が肩代わりする必要はありませんのでご安心ください。
ただし!!!
親族が債務の保証人となっているケースですと、支払義務が課せられる事も有り得るのでご注意ください!!!
夫が自己破産を行ったとしても、妻のローン審査などに影響を与えることはないのでご安心ください!
3.財産によっては手元に残すことが可能
自己破産を行う際には財産を処分する必要がありますが、中には以下の様に手元に残すことが出来る財産も存在します。
・20万円以下の預貯金
・99万円以下の現金
・最低限度の家電(洗濯機、冷蔵庫など)
現金や預貯金をこんなに手元に残せるのは意外と知られていないかもしれませんね。
他にも残せる財産が有りますので、事前に確認しておくのも良いでしょう。
自己破産のデメリット
自己破産のデメリットは以下のような項目が挙げられます。
1.仕事を辞めなければならないケースがある
2.借入やクレジットカードが一定期間利用できない
3.携帯電話などの契約が出来ないケースがある
4.自宅や車を失うケースがある
5.管報に氏名が掲載される
6.債務に保証人がいる場合は悪影響がある可能性がある
債務免除の引き換えに社会的信用を失ったと考えると解りやすいかと思います。
1.仕事を辞めなければならないケースがある
こちらでも説明しましたが、自己破産した方が就業できない職業が存在します。
一生資格を失うわけではありませんが、一定期間の就業は不可能となりますのでご注意ください。
2.借入やクレジットカードが一定期間利用できない
自己破産を行うと個人信用情報に登録されるため、いわゆる【ブラックリストに載った】状態となります。
各種審査=信用情報の確認となりますので、必然的に借入やクレジットカードの利用が不可能となると考えて良いでしょう。
なお、現在使用しているクレジットカードがあった場合は、自己破産手続き開始をもとに強制解約となるので引き続き使用することはできません。
信用情報に問題がある=100%審査落ちとはなりませんので、人によっては審査に通過できるケースもあります。
3.携帯電話などの契約が出来ないケースがある
携帯電話を購入する際の分割支払いが不可能となりますので、高額なスマートフォンを希望される場合には、契約が困難となるでしょう。
また、新規契約を行う場合でも審査が行われますので、その点でも携帯電話の契約が困難になるといえます。
4.自宅や車を失うケースがある
車については【ローンの残債】【自動車の時価】によって判断が異なります。
ローンの残債がある場合は、所有権がローン会社にあると判断されるため、自己破産時に処分されます。
自動車の時価が20万円以上であった場合も、自己破産の過程で財産処分が行われます。
ローンの残債がなく、時価も20万円以下であれば引き続き所有が可能となるケースがあります。
家に関しては総じて価値の高い資産となるので、財産処分の対象となります。
ただし、処分となるのは持ち家の場合のみですので、賃貸は対象外となります。
5.管報に氏名が掲載される
官報とは国が発行する情報紙で、政策や国民の権利義務など公告が掲載されているものです。
自己破産を行った場合はこの官報に【氏名/住所/決定日/手続きした裁判所】などが記載されることとなります。
官報はだれでも購読可能なもんですので、場合によっては周囲に手続きを行った事がバレる危険性があります。
とはいっても官報を愛読しているような人に出会ったことはありませんが・・・
※過去には破産者マップなどが作成されたケースもあるので、安心しすぎも要注意ですね
6.債務に保証人がいる場合は悪影響がある可能性がある
自己破産により免除となった債務に保証人がいた場合、保証人が残債を一括で返済する義務が発生します。
もしも債務に保証人が付いているようでしたら、事前に自己破産を行う旨や誠意ある謝罪を行うことをお勧めいたします。
自己破産を行った後の生活
苦労して行った自己破産ですが、その後の生活がどのようになるのかご不安かと思います。
自己破産を行うと一定以上の資産は処分されますが、その後はほぼ通常の生活と変わりません。
ただし、デメリットでも解説したように、自己破産後の生活では様々な制限が発生しますので注意しましょう!
自己破産後に可能なこと
自己破産後は債務の返済義務が免除となるので、新たに資産を獲得しても没収されることはありません。
自己破産手続き中も、自己破産完了後でも一部の職業以外であれば仕事も可能ですので、稼いだお金を貯金しておくことも問題ありません。
自己破産後はローンやクレジットカードを利用する事が困難なので、基本的に現金一括での購入が主となります。積極的に貯金を行うことはかなり重要です。
自己破産後に困難なこと
自己破産後の一定期間は様々な制限が発生します。
以下の行動は100%無理とは言い切れませんがかなり困難ですので、把握しておきましょう。
1.ローン利用
2.クレジットカード利用
3.金融商品の購入
基本的にはデメリットで解説したこととと同様です。
5~10年程度は信用情報に事故登録が残りますので、その期間中は利用が困難です。
金融商品(株や投資信託など)の購入にも審査が行われるケースがありますので、利用は困難です。
家族への影響はあるのか?
基本的には個人の手続きですので、家族に返済義務が生じたり、法的ペナルティが発生することはありません。
ただし、家族と同居しているような状況ですと、家や車の処分などで生活に大きな影響を与える可能性がありますので要注意です。
一定以上の価値がある資産は処分されるので、家や車を失うのが大きな影響と言えます。
他にもクレジットカードの家族カード、保険(解約返戻金20万円以上)の解約、保証人であった場合の返済義務等々・・・
場合によっては大きな影響を与える可能性があるので、自己破産利用前によく確認しておきましょう!
なお、家や車などが家族名義であれば処分されることはないので、名義にも要注意です。
まとめ
以上が自己破産について抑えておくべき各項目となります。
自己破産は条件を満たしていればすべての人が利用できる制度ではありますが、債務が0になる代わりに数々のデメリットも存在する制度です。
万が一の時には積極的に利用するべきではありますが、可能な限りそのような状態にならないよう立ち回ることが重要です。
いざという時に焦らないように、自分が利用可能なのか?どのようなデメリットが想定されるのか?などを事前に確認しておくようにしましょう。